「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 先週に引き続きまして,Profession Journal誌に,「会計不正調査報告書を読む」連載第109回を寄稿しました。今回は,ネットワンシステムズ株式会社の従業員による資金の不正流用事件に関する外部調査委員会調査報告書がテーマです。

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 この事件,2020年2月と3月に公表した特別調査委員会報告書で,架空循環取引事件の調査中に,原価の付替えが発見されていたことが端緒となるべきだったのですが,なぜか,当時の調査委員会もその後のネットワンシステムズ社も,「原価の付替え」が認識されたことには反応せず,架空循環取引を巡る決算修正に奔走していたようです。

 そうした中,2020年10月22日になって「外部機関」からの指摘により,元従業員が資金を流用していた疑義が浮上します。そのため,2019年12月設置の特別調査委員会とはまったく異なる外部長委員会を設置して調査を行った結果が,今回,公表された報告書というわけです。

 記事にも書きましたが,11月2日に、ネットワンシステムズ社が適時開示した「外部調査委員会設置に関するお知らせ」を読んだ時には、「やはり資金の横領もあったのか」と、「どうして特別調査委員会の調査では発覚せず、外部機関―おそらくは証券取引等監視委員会かと思われる―によって指摘されるまで、発覚しなかったのだろう」という感想と疑問を抱きました。調査報告書は,疑問に対する回答に十分応えてくれたとは言えない内容だと思いますが,その後,ネットワンシステムズ社が設置したガバナンス・企業文化改革委員会には,今回の外部調査委員会の委員長と委員が加わっていらっしゃるので,同委員会が3月19日までに取りまとめる予定の,検証結果と再発防止策の提言の公表を待ちたいところである。