「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 ほぼ毎月寄稿させていただいているweb情報誌Profession Journal4月2日公開号に,「会計不正調査報告書を読む」連載第98回が掲載されています。とりあげた報告書は,ネットワンシステムズ社の架空循環取引をめぐる特別委員会最終報告書です。2月に公表された中間報告書で十分解明されていなかった点が,どの程度明らかになっているかという視点で,検証しました。

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 筆者が中間報告書を読んで,解明が不十分であると指摘していたポイントを,上記の記事から引用します。

純額取引ルールに内在しているリスクに対して、監査部門と会計監査人との間で、どのような認識が共有されていたのか。取引の実在性の検証は、どちらの監査項目となっていたのか。A氏の部下は、A氏による不当な業務命令に対して、なぜ、内部通報を行わなかったのか。3月13日に公表が予定されている特別調査委員会の最終報告書では、再発防止策が機能しなかった理由について、どれくらい言及がなされているのか、注目したい。

 最終報告書は,結論から言えば,こうした疑問点には答えてくれませんでした。また,中間報告書を公表した際の説明会で,ネットワン社は,首謀者であるA氏について,「刑事告訴したい」旨のコメントを出しておりますが,最終報告書を読む限り,A氏をどういう罪で告訴するのか,かえって不透明になりました(中間報告書の段階では,横領罪が成立する可能性があると考えられました)。

 A氏の罪状を掘り下げるために調査期間を1か月延長した特別調査委員会ですが,個人的には,あまり解明が進んだとは評価できないと考えております。

 この架空循環取引による有価証券報告書虚偽記載事件については,おそらくは証券取引等監視委員会も検査に臨むものと思われ,検査の過程で新しい事実が判明する可能性もありますので,今後のリリースを注視し続けたいと思います。

 なお,同じ号で,「租税争訟レポート」連載第48回も公開されています。こちらは日本に家族を残したまま,シンガポールアメリカ,インドネシア,そして中国の会社を経営する者が,日本の居住者に該当するかどうかが争われた訴訟で,裁判所が,課税庁による課税処分と国税不服審判所の裁決を一蹴して,納税者は非居住者であるという判断を下して,納税者の請求を全面的に認容したものです。

 合わせてご一読ください。

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