「会計不正調査布告所を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 web情報誌Profession Jornalで連載させていただいている「会計不正調査報告書を読む」連載第77回が公開されました。

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 今月の事例は,株式会社アクトコール第三者委員会調査報告書です。

 東証マザーズ上場直後の取引から,グループ内取引ではないかという疑義を持った会計監査人が,調査の必要性を指摘したことがきっかけでした。第三者委員会の調査により,疑義を持たれたいずれの取引も,創業者であり,大株主である代表取締役が,自らのプライベートカンパニーを利用して,アクトコール及び連結子会社の業績を押し上げることを目的に,資金循環取引を行っていたことが判明しました。

 株式公開時に手にした創業者利益や,自ら調達した資金を使って業績を押し上げた経営者というと,少し古いですが,日本システム技術事件を思い出します。

 アクトコール第三者委員会は,3人の業務執行取締役の責任を厳しく追及しています。例えば,「会計処理の不適切性を認識していなかった」と主張する代表取締役については,

上場会社の代表取締役に求められる通常の知識と判断能力を有していれば、会計処理の不適切性についても、認識し得たはずであり、もし、会計処理の不適切性を認識していなかったとすれば、それは同氏が上場会社の代表取締役としての必要な知見を欠いていたといわざるを得ず、同氏の責任を否定する理由にはならないと考えることから、同氏には、中心的な関与者としての責任が認められるのみならず、同氏が上場会社の代表取締役として本来期待される責務を果たしていたということはできず、複数の取引について会計処理を訂正し、過年度の決算の訂正を余儀なくされた事態の重大性に鑑みれば、同氏の責任は重大であるといわざるを得ない

という具合です。厳しいですね。

 その後,3人の業務執行取締役は,「基本的に謹慎とし経営から離れることを決定(9月1日付リリース)」ということですので,実質的には,第三者委員会が辞任を迫った格好になります。

 なお,同社は,新しい組織として経営監視委員会を設置して,新しい鳥sマリ役の選任をはじめ,経営体制の整備を急ぐということです。