ちょうど,オランダの選挙で,ウィルデルス氏率いる自由党が注目を集めているときだったので,読んでみました。
ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書)
- 作者: 水島治郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/12/19
- メディア: 新書
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オランダ自由党の伸長ぶりは,本書第4章『リベラルゆえの「反イスラム」――環境・福祉先進国の葛藤』に詳しく説明されていますが,その特異な党運営――たとえば,自由党はウィルデルス氏のみが正式な党員であり,政党助成金ではなく,寄付によっていること――については,新聞やTVなどで伝えられることもなく,本書で初めて知りました。
ポピュリズムに関する著者の知見には,感心させられるものが多いのですが,一番気になった部分を,あとがきから引用します。
21世紀の欧州のポピュリズムは,現代デモクラシーの依供するリベラルな価値,デモクラシーの原理を積極的に受け入れつつ,リベラルの守り手として,男女平等や政教分離に基づきイスラム移民を批判する。またデモクラシーの立場から,国民投票を通じ,移民排除やEU離脱を決すべきというロジックを展開する。現代のポピュリズムは,いわばデモクラシーの「内なる敵」として立ち現れている。その論理を批判することは容易なことではない。
今回の選挙関連の報道では,トランプ大統領の登場がかえって,自由党の議席増に歯止めをかけたという論調もあったようですが,オランダ新政権がどのような形でまとまっていくのか,気になるところです。