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書籍『会計のいま,監査のいま,そして内部統制のいま』

 青山学院大学の八田進二,橋本尚両教授と甲南大学の伊豫田隆俊教授による鼎談集。「初学者にも理解できるよう比較的わかりやすい論点を取り上げ,過度に専門的な用語を用いることなく,できるだけ平易な表現を用いるように努めた(はしがき)」との狙いはうまくいっているように思いました。ただ,「常日頃より公私にわたって懇意な関係にある(はしがき)」気安さからかもしれませんが,じゃっかん,居酒屋でのオヤジ談義のように読める箇所があったようにも感じました。小職などは,むしろ,そうした発言――たとえば,近頃の会計研究者は云々――に親近感を覚えるのですが,サブタイトルとなっている「日本経済を支える基本課題」にはあまり,関係がないかもしれません。

会計のいま、監査のいま、そして内部統制のいま ー日本経済を支える基本課題とは?ー

会計のいま、監査のいま、そして内部統制のいま ー日本経済を支える基本課題とは?ー

  • 作者: 八田進二,伊豫田隆俊,橋本尚
  • 出版社/メーカー: 同文舘出版
  • 発売日: 2016/04/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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  興味のある論点はたくさんあるんですが,八田教授が繰り返し「倫理観」を強調しておられるのが印象に残ります。たとえば,IFRSの原則主義を受け入れるために,会計処理ないし判断を行う担当者が満たすべき要件として,

適切な会計判断を可能とする一定水準以上の会計的専門知識

不正とは隔絶した誠実性と倫理観

を強調したうえで,「いま一番問われているのは,こういった人間としてのあり方ないしは心のもちよう」であり,問題の解決策は「善良な当事者としての意識を育む」と指摘しています。(p.98)

 会計不正に対して,公認会計士に「職業的懐疑心」を発現すべきだという指摘は多いのですが,その前提として,「職業的倫理観」が問われているのではないかというのは,小職も抱いている問題点なのですが,本書でも,教育に関して,「倫理性」「誠実性」「人間力を高めるような教養教育」の重要性が語られていて,大いに共感しました。

 最後に八田教授の言葉を引用して,本稿を締め括りたいと思います。

結局,監査がうまくいくかどうかは監査人の人的資質にかかってますからね。(p.235)