「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

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 本日公表されましたProfession Journal誌に,「会計不正調査報告書を読む」連載第67回を寄稿しました。上場持株会社であるOSJBホールディングス株式会社傘下の事業会社で,従業員による不正が発覚したことを受けて設置された社内調査委員会による報告書について検討をしています。

 不正は,協力会社に水増し・架空発注を行ったうえで,キックバックを受領して,交際費や懇親会費に流用していたというもので,とくに複雑な隠蔽工作が行われていたわけでもないらしく,国税局による税務調査で発覚しています。

 いくつか論点がありました。

 OSJBホールディングス株式会社は持株会社といいながら,多くの取締役は事業会社の取締役を兼任しており,実質的に一体となった経営が行われているように思えます。そうした場合における,親会社の子会社の業務執行に関する管理監督はどうあるべきだったのか,というのが1点目。

 不正が発覚した事業会社では,「現場従業員が不正を行う可能性がある」という考えに基づく内部統制が行われていないかったと,報告書で指摘されていることが2点目。

 社内調査委員会の委員の多くは,不正があった事業会社でも取締役または監査役を兼任しており,業務執行にも携わっていましたが,そうした委員による調査に,独立性や中立性が期待できるのか,というのが3点目。

 同業他社の不正事例にもう少し興味を持っていれば,国税局による税務調査を待たずに,不正を発見し,または不正の防止策を策定することができたのではないかと強く感じた不正事件です。