小林よしのり・宮台真司・東浩紀『戦争する国の道徳』

  小林よしのりさん,宮台真司さんという,まるで異なる政治的立場や歴史認識を有する二人の論客を,東浩紀さんが自ら経営するゲンロンカフェに招いて行われた鼎談(第1部)と,その後,非公開の場で再度行われた鼎談(第2部)を収録した新書を読みました。

  一読して驚いたのは,小林氏と宮台氏が妙に共感を表明する場面が多いこと。宮台氏が「もう大衆を信じちゃダメ」と何度も口にしていること。あるいは,小林氏が,「いま思えば,かつて民主党が『コンクリートから人へ』と言っていたことは正しい」と述べていること。

 第1部と第2部の間に収められた東氏の文章『この不自然な共闘を喜ぶな』で,東氏は,こうした状況を,「極右の台頭は保守とリベラルの共闘を促す」と解説しています。そして,こう文章を締めくくります。

小林氏と宮台氏が安心して罵り合えるような状況がまた訪れたら,ぜひ本書の続きを収録したいと考えている。

  本稿を書いている最中,日本銀行マイナス金利政策導入を決定することが発表された。異次元緩和を更に進めるということのようだが,本書で,小林氏は,「延々といつもでも金融緩和をすることはできない」と批判し,安倍政権のやり方はいつか行き詰まる,としている。

 どちらが正しい現状認識であるかは,そう遠くない未来に判明するはずなのだが。