【書籍】沢渡あまね+奥山睦『働き方の問題地図』

 『働き方改革』。

 年初から新聞紙面を飾ることの多い言葉ですが,「さて,どうすればいいのか」とお悩みの経営者,人事部長も数多くいらっしゃるのではないでしょうか。解説本は数多く出ているものの,どれも自社の状況に合うようで会わないし。コンサルタントを雇う余裕もないし,コンサルタントを入れたところで成果が出るのかもわからない。

  そんな『働き方改革』を取り巻く現状に一石を投じる書籍が本書です。

働き方の問題地図 ~「で、どこから変える?」旧態依然の職場の常識

働き方の問題地図 ~「で、どこから変える?」旧態依然の職場の常識

 

  本書は,平易な文章でイラストも多数配されていることから,読みやすいことは間違いありません。何より,お二人の著者のこれまでの実体験に基づいた解説が,非常に分かりやすく書かれています。もちろん,本書で繰り返しメリットが言及されている,テレワーク(在宅での就業)ができない職種もあり(沢渡さんの奥様が保育士をしておられるので,テレワークができるのは沢渡さんだけという記述は印象的でした),必ずしもすべての業種業態に解を与えるものではないのですが,管理部門だけでもテレワークをとりいれてみようとか,営業部門から導入を開始しようといった,「0か1ではない」という提言は,たいへん参考になりました。

 もう一人の著者である奥山さんの体験はもっと壮絶です。2014年5月から1年間の闘病生活を余儀なくされながら,「その時の自分に残されたリソースで最善を尽くす」ことで,奥山さんの経営する会社は,代表者が闘病中でフルタイム働けないにもかかわらず,過去3年間で最も高い売上高を記録したとのことです。

 このままでは「1億総疲弊社会」になってしまうという著者のお二人の主張が現実のものとならないように,できることから始めるしかない。それだけは間違いないようです。