「租税争訟レポート」Profession Journal誌に寄稿しました。

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 不定期の寄稿させていただいているProfession Journal誌に「租税争訟レポート(第36回)」として,昨年12月15日に最高裁判所が言い渡した判決をとりあげました。原審,第1審判決ともに,同誌に評釈を寄稿してきました「馬券の払戻金に係る所得区分と外れ馬券の必要経費性」についての,新しい最高裁判決です。

 馬券の払戻金については,平成27年3月19日の最高裁判決により,PCソフトを利用して,多数の馬券を自動的に購入し続けるなど,一定の要件を満たせば「雑所得」とするという所得税基本通達の改正が行われ,その後の,税務行政においてはこの通達をもとに課税処分が行われていました。

 本件訴訟の納税者は,ソフトウエアの利用ではなく,個人で分析したデータに基づいて,多額の馬券を購入して恒常的に利益を上げていたため,処分行政庁は,上記改正後の通達に基づき,これを「一時所得」として課税処分を行いました。第1審は納税者の訴えを棄却し,原審はこれを逆転して,課税処分の取消しを命じて,さて,最高裁はどう判断するか,というのが焦点でした。

 下級審では,改正後の通達にある「一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有する」かどうかを巡って見解が分かれたものでしたが,最高裁は,この文言にとらわれず,被上告人(納税者)の馬券購入行為そのものを継続的行為であり,客観的に見て営利を目的とすると判断して,上告人である国の訴えを斥けました。

 その結果,国税庁は,上記通達の再改正を余儀なくされます。

 3月からパブリックコメントを実施して,通達改正を行うとのことです。

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 前回改正時には,パブリックコメントを実施したものの,結果的にはコメントの中身を一切採用せずに,改正案をそのまま押し通した国税庁ですが,さて,今回はどうするのでしょうか。前回のパブリックコメントの中には,改正内容に反映していれば,最高裁判決を待たずとも,本件の被上告人である納税者を救済することができたはずなのですが。