web情報誌Profession Journal2025年10月2日号が公開され,当職が2カ月に一度,掲載いただいている「租税争訟レポート」連載第81回の閲覧が可能になっています。
今回は,「勤務実態のない者に支払った給与」についての課税関係が争われた札幌地方裁判所令和6年1月29日判決をとりあげました。代表取締役の交際相手が受け取っていた給与と賞与について,代表取締役が亡くなったため,交際相手は,「これ以上は給与を受け取ることはできない」として,亡代表取締役の娘である監査役に辞退を申し出ます。監査役は,現在の代表取締役である亡くなった代表取締役の息子にその旨を告げます。二人とも,原告である会社から,交際相手に給与が支給されていたことは知らなかったのですが,生前の父親が交際相手にお世話になっていたことを理由に,決算期末まで給与を支払い続けました。
この給与が,亡くなった代表取締役に対する給与であると認定した札幌中税務署の課税処分をめぐる札幌地方裁判所の判決を解説したものです。
判決は,「勤務実態があった」とする原告の主張は棄却されて,国と処分行政庁の主張どおり,交際相手が受け取った給与は,亡くなった代表取締役に対する経済的利益の供与であるから給与となるとして,法人税の所得金額の計算上,損金の額に算入しないこと,亡くなった代表取締役にかかる源泉所得税について納税告知処分をおのなうとともに,法人税ついては重加算税を課すという厳しい処分について,適法であると認めました。
記事にも書きましたが,事実関係だけを見れば,関係者の誰ひとり,法人税を免れようとか,書類を偽造しようとかいった意図はどこにもうかがわれないのですが,それでも,裁判所は重加算税を適法であるという判断をしています。
あと,国税不服審判所の裁決で処分が取り消されたため,裁判の争点にはなりませんでしたが,処分行政庁は,交際相手の社会保険料についても,亡くなった代表取締役に対する経済的な利益の供与であるとして,給与として課税する処分をしていましたが,国税不服審判所は,令和3年12月8日付の裁決で,法定福利費は,健康保険法等の法律に基づいて従業員等のために事業主が強制的に負担する費用であることから,法定福利費は亡くなった代表取締役が個人的に負担すべきものではなく,また,法定福利費の支出により代表者が享受した経済的な利益があったとも認められないから,代表者に対する役員給与とは認められないとして,この部分を取り消す判断を示しています。
記事では,国税不服審判所の裁決についても,紹介しています。
ぜひ,お読みいただければと思います。