「租税争訟レポート」Profession Journal誌に寄稿しました。

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 web情報誌Profession Journalに連載中の「租税争訟レポート」に新しい記事を寄稿させていただきました。 

決算期末,節税対策として商品券などの金券を多めに購入して,とりあえず「交際費」に計上しておく――そんな手法が推奨された時代もあったようです。税務調査がなければ,節税対策は有効に機能して,納税者も税理士も「やれやれ」なのですが,本件のように,税務調査が入ってしまい,誰に,いつ,何枚渡したのかを証明する資料が残っていないと,それは損金の額に算入することはできません,と結論づけられてしまうという事例です。

 商品券の配布先をめぐる納税者側の主張は,税務調査時,不服申立て時,そして裁判中と,かなり変遷しています。

 たとえば,税務調査時には,納税者の代表者は,「頭の中にはあるが,渡した相手は多数で,明細は作っていない」旨の応答をしたと,裁判所は認定しています。調査時に税理士の立ち合いがあったどうかは定かではないのですが,このときに,何らかの交付者リストを出すことができなかった点が,裁判でも原告の請求が棄却された原因になっているのではないかと思います。その後,国税不服審判所における審判においても,「誰に,いつ,何枚」ということははっきり主張せず,審査請求も棄却されています。こうした状況で,裁判の場で急に名簿らしきものを証拠として提出したところで,やはり証拠価値としては低いと判断され,原告の主張が認められなかったのもやむを得ないところでしょう。