「会計不正調査報告書を読む【連載第71回】」Profession Journal誌に寄稿しました。

 Profession Journal誌に不定期連載中の「会計不正調査報告書を読む」連載第71回は,昨年11月に公表された福井コンピュータホールディングス株式会社の第三者委員会調査報告書をとりあげました。

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 問題となったのは「関連当事者取引」。福井コンピュータホールディングス株式会社の筆頭株主代表取締役を兼務している同社会長が経営するダイテックグループとの取引や,第2位の株主である株式会社LIXILのグループ会社との取引が,監査役会で問題とされ,第三者委員会を設置して調査が行われました。

 第三者委員会は,主に次の3つの視点から取引内容を分析しています。

  • 関連当事者取引に関して,役員に善管注意義務違反などの法的責任があるか否か
  • 関連当事者であるダイテックグループ及びLIXILグループとの取引において,福井コンピュータホールディンススグループの利益を毀損するような不当な取引が存在したか否か
  • 関連当事者取引に関する有価証券報告書の記載につき,開示義務違反があったか否か

 その結果,関連当事者との取引に不当なものはなく,福井コンピュータホールディングスの役員には善管注意義務違反などの法的責任はないと結論づけて,調査を終了しました。そうすると理解できないのは,第三者委員会の設置と同時期に,福井コンピュータホールディングス代表取締役社長が辞任を表明したことです。残念ながら,調査報告書には,辞任に関する記述は一切ありませんでしたので,真相はわからないままです。その後,同社の取締役の辞任が相次ぎ,今年になってもLIXILが持株割合を引き下げるなど,まだ動きがありそうですので,決算発表,株主総会の招集通知などの情報を追いかけたいと思っているところです。