「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 ほぼ月一回連載を継続させていただいている「会計不正調査報告書を読む」連載第86回が公開されました。今回は,兵庫県にある社会福祉法人明照会で発覚した創業家一族による法人からの利益供与問題について,第三者調査委員会の報告書をとりあげました。

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 社会福祉法人を設立した創業家が,設立にあたって多額の寄付を行うことから,理事会の要職を一族で固めて,結果的に法人を私物化してしまうという不正行為は,おそらく明照会に限った話ではなく,本連載第52回でとりあげた社会福祉法人夢工房でも,ほぼ同じような業務上横領を疑われる行為が創業家出身理事長らによって繰り返されていたように,潜在的には,どこの社会福祉法人でも起こりうる事象なのではないかと考えます。

 調査委員会が,再発防止策の提言の中で,「役員等に対して社会福祉法人制度についての理解を深めることができるような研修を受講する機会を法人として確保することが必要」であり,創業家は,「出資」をしたのではなく,「寄付」を行った斧であるから,社会福祉法人の財産は,創業家のものではないことをはっきりと認識させるべきであると強調しているように,社会福祉法人と営利を追求する株式会社との相違を,創業家はもちろん,法人の理事・監事・評議員といった役職にある人たちが,しっかりと認識することが改めて求められてた事案であったように考えました。