「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 月いちで連載を続けている「会計不正調査報告書を読む」連載第118回が,昨日,公開されました。今回とりあげた事案は,関西の老舗工作機械メーカー,OKK株式会社の過大な仕掛品の計上による粉飾決算です。OKK(旧社名は大阪機工株式会社)は,基幹システムの保守期限切れに伴い,見切り発車的に,2016年5月に新基幹システムに乗り換えます。旧システムの不健全なデータをそのまま引き継いだのみならず,新システムでも仕掛品勘定残高が不自然に増加したことから,抜本的な見直しを主張する会計部門担当者の意見は,当時の管理本部長に一蹴され,会計監査の眼をごまかすため,小手先のデータ改竄を続けることになります。

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 EY新日本有限責任監査法人は,48年間の長きにわたり,OKKの会計監査を担当してきました。その是非はともかく,年商200億円程度の企業で,仕掛品残高が毎期毎期50億円を超えているというのは,やはり異常値ではないかと思います。2016年6月にOKKの取締役監査等委員に就任した公認会計士資格を有する「H氏」は,就任の際に「決算書を見て、異様に在庫が多いなという印象」を持ったと,調査報告書にも記載があります。今回問題となった仕掛品残高の異常は,調査の始期である2016年の期首時点で既に存在していたものであり,どの時点で,異常が生じていたのかはわからないままになっています。

 基幹システム移行の難しさ,とりわけ「見切り発車」的に移行することのリスクを改めて考えさせられる事案でした。