ACFEカンファレンス2018の募集が始まりました。

 一般社団法人日本公認不正検査士協会ACFE JAPANの最大のイベントであるカンファレンス内容が公開され,参加者の募集が始まっています(筆者は初日に申し込みました)。

 今年は10月5日(金)の開催です。

2018年10月5日 第9回 ACFE JAPAN カンファレンス 開催概要

 開催概要を見ると,午前10時から午後6時まで,まるまる一日,盛りだくさんな内容が予定されています。

 午前は,ブロックチェーンに関する講演で,麗澤大学経済学部の中島真志教授が,「ブロックチェーン技術の将来性」をテーマに、その後,日本銀行の山岡正巳決済機構局長が,「ブロックチェーン技術の活用と企業・金融・市場にもたらす変化」をテーマに,それぞれお話しされるということで,筆者がいまいち理解できていない,ブロックチェーンフィンテックについて,最新の知見をお聴きできるのではないかと期待しております。 

 そして,何より楽しみにしておりますのは,午後,大王製紙元会長の井川意高氏がご登壇されることです。これを書いている今日にも,カジノ法案が成立しそうな勢いですが,カジノですべてを失ったご経験者が,どのようなお話をされるのか,現在はどのようなご心境なのか,カジノ法案についてどう考えているか,お聴きしたいことが山積です。お話を引き出されるのは,ACFEではおなじみの青山学院大学の八田名誉教授。そこに,『政経電論』編集長の佐藤尊徳氏が加わるということで,どのような展開になるのか,たいへん楽しみにしております。

 年に一度,全国の公認不正検査士CFEが一堂に会する機会,CFEのみなさんは業務の都合させ合えば参加されるのは当然としまして,CFE資格に興味をお持ちの方もぜひ,会場に足をお運びいただき,CFEの世界に触れてみていただきたいと思います。

 まる一日さまざまな刺激を受けた後の脳に,懇親会での冷えたビールは非常に心地良く響くこと請け合いです。

 10月5日,御茶ノ水でお会いしましょう。

書籍『東芝事件総決算――会計と監査から解明する不正の実相』

 公認会計士の大御所,久保惠一先生による『東芝事件総決算』を読みました。 350ページに及ぶ大著で,実に読み応えがありました。もちろん,「今だからそう分析できるのでは?」と思われる記述もありましたが,私の見解とは異なる点も多く,たいへん参考になりました。

東芝事件総決算 会計と監査から解明する不正の実相

東芝事件総決算 会計と監査から解明する不正の実相

 

  たとえば,東芝の第三者委員会は,ウェスチングハウスののれんの減損問題を調査対象としていませんが,久保先生の分析によれば,たとえ調査対象にしていたとしても,「監査法人の判断を尊重して問題としない」という結論になったということです。その理由としては,次の2点を挙げています(12ページ)。

SESCは,第三者委員会の調査範囲の決定を監視していたはずなので,ウェスチングハウスののれんの減損に問題がありそうであれば,調査範囲に加えるように東芝に指示したであろうこと

金融庁は,新日本監査法人の処分に当たって,のれんの減損問題を検討したはずだが,処分文書にはのれんの減損問題について触れられていないこと

 なるほど。第三者委員会の調査範囲を東芝が決めるなんてとんでもないことだ,なぜ,のれんの減損が調査範囲から除外されているのかと,表層的な批判をするのに止まらず,結果的に,調査をしたとしても問題にはならなかったのではないかという指摘は,初めて目にした気がします。

 他にも,PwCあらた監査法人による「限定付き適正意見」の表明や東京証券取引所による「上場維持」の判断などの,トピックについて,明快な分析が提示されています。

 東芝事件に関する著作はいくつも読ませていただきましたが,「総決算」を自称するだけのことはありました。

「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載しているProfession Journal誌の「会計不正調査報告書を読む」。第74回となる本日公開の記事は,日本紙パルプ商事株式会社の社内調査委員会調査報告書をとりあげました。ノンコア事業,非連結子会社,内部統制スコープの範囲外という,常況会社の子会社で不正が起きる場合の3点セットとでもいうべき特徴を備えた子会社を舞台にした会計不正は,子会社設立時から取締役の職にあった実力者(専務)によるものであり,横領まで行われていたことが判明しました。

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 今回不正が明らかになった子会社では,過去にも,元取締役による横領事件があったことが,調査報告書で触れられています。2014年における親会社監査部門による業務監査により発覚したとのことですが,このときの再発防止策が不徹底であったことが,原因分析の中で,挙げられています。1件の不正が発覚するということは,複数の露呈していない不正が存在することを意味している場合が多いのは,過去の事例が示すとおりです。ノンコア事業を担う小規模な子会社であっても,いざ,不正が発覚してしまうと,上場会社グループ全体に大きな影響を及ぼすことになるのもまた,過去の経験が教えるとおりです。発覚した不正を個人の資質によるものであるとか,特異な事例であるとして矮小化することなく,他に同様な不正の予兆はないかきちんと調査を行い,原因を分析して,再発防止を図っておくことの必要性をあらためて示した事案でした。

 

「速報解説 日本公認会計士協会 上場会社等における会計不正の動向」を寄稿しました。

 日本公認会計士協会が,6月26日付で公表した経営研究調査会研究資料第5号「上場会社等における会計不正の動向」についての解説記事を,Profession Journal誌に寄稿しました。

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 編集部からオファーがあったとき,公認会計士協会の研究資料を会員でもない筆者が解説するのもどうかなという懸念はありますが,テーマが会計不正ということですので,これはお引き受けしてもいいかなと思った次第です。

 研究資料自体は15ページほどの分量ですので,目を通すのにそんなに時間はかからないと思いますが,いくつか,面白い分析があり,また,「会計不正事例の紹介」という記事が10本あって,「これはどこの会社のもだろうか」などと,推測する楽しみ(?)もありました。

 たとえば,会計不正の発覚経路について,未公表としている会社が29社もあり,この点について,研究資料は,「発覚経路を明らかにすることは,適切な発生原因の分析,有効な再発防止策の構築につながるものであり,積極的に公表することが望まれる」と批判的に評しています。

 また,会計不正の共謀についての集計結果からは,役員と管理職については,共謀して会計不正を行うことが多く,非管理職については,単独での会計不正行為が共謀を上回っていることが明らかになっています。部下がいる人間は自分自身で不正を行うよりも,部下の指示をして,会計不正をさせているということかもしれません。

jicpa.or.jp

書籍『十人十色の「ひとり税理士」という生き方』

 『ひとり税理士の仕事術』の著者である井ノ上陽一氏の編集による,「ひとり税理士」として生きる選択をした(せざるを得なかった)10人の税理士の「生き方」を紹介する本です。

 内容的には,以下のような項目について,10人のひとり税理士が,自分の体験や考えを語るというものでした。

・なぜひとりを選んだか

・ひとり税理士の苦悩や不安

・ひとり税理士としての失敗事例

・ひとり税理士としての成功事例

・ひとり税理士のメリット

・どういう生き方をしているか

 ・独立を考えている方へのメッセージ

十人十色の「ひとり税理士」という生き方

十人十色の「ひとり税理士」という生き方

 

  2人目の方の各項目を読みながら,すでに,これは「ひとり税理士教」信者による教祖様(井ノ上陽一氏)礼賛文だなと感じていました。その感覚は,最後まで続きます。

 その理由は,ひとり税理士として独立を決意し,または独立をお通ししてくれたのは井ノ上陽一氏のブログであり,著作であったことや,税理士としての仕事の仕方が,以下のような点で酷似していることにありました。

 自分の「軸」を作り,自分の「軸」を磨く

 ブログは毎日更新する

 ホームページやブログで集客し,同時に,顧客を選別する

 これでは,十人一色ではないかと。

 確かに,「生き方」の部分は十人十色と言えなくもないのですが,それでも,家族との時間を大事にする,夜や土日に仕事をしないなど,共通点も目につきます。みなさん,楽しそうに生きているので文句をつける筋合いのものではありませんが。

 私はひとり税理士になっってから,井ノ上陽一氏の著作を読み,ブログに目を通すようになって,よく似た考えの税理士もいるものだと思ったくらいですから,私自身も,「ひとり税理士教」の信者を自認しています(教祖様には破門されるかもしれませんが)。ただ,税理士として糊口をしのぐ方法が,毎日更新するブログで自分を発信して,自分の「軸」を持つことしかないのかな,という違和感です。

 とはいえ,税理士試験受験者数が減少している時代,会社組織の中でなんとなく一生を終えたくないと考えている人たちにとって,税理士という職業を選択することは,楽しい人生を送るために有効な手段であることを示すためのガイドブックとして,井ノ上陽一氏の他の著作ととともに,広く読まれればいいと思います。

 

ひとり税理士の仕事術―雇われない・雇わない働き方 仕事も人生も楽しむ税理士

ひとり税理士の仕事術―雇われない・雇わない働き方 仕事も人生も楽しむ税理士

 

 

ひとり税理士のIT仕事術―ITに強くなれば、ひとり税理士の真価を発揮できる!!

ひとり税理士のIT仕事術―ITに強くなれば、ひとり税理士の真価を発揮できる!!

 

 

「速報解説 公表裁決事例平成29年10月~12月分」をProfession Journal誌に寄稿しました。

 国税不服審判所が四半期単位で公表している裁決事例ですが,平成29年10月分から12月分が,去る6月18日に公表されました。今回公表された裁決事例は9件,うち5件が国税徴収法関連のもので,第二次納税義務や告知処分,滞納処分など,徴収をめぐる裁決事例の公表が,このところ増えている印象です。

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 注目裁決事例としてとりあげた裁決も,3件のうち2件を国税徴収法関連のものから選びました。うち1件は,滞納者が株式を有している同族会社(審査請求人)に対する納税義務の告知処分にかかる限度額の算定が争点であり,,もう1件は,滞納者から承継した動産に対する差押について,所有権がすでに審査請求人に移転しているかどうかを国税不服審判所が判断したものです。どちらも,納税者である審査請求人の主張が認められ,原処分庁による処分は全部取消しの判断が出ています。

 公表された事例は,いずれも,徴収の現場における原処分庁の行き過ぎた処分に歯止めをかけるものでしたが,実際にどの程度,こうした「無理筋の徴収」が行われているのかはあまり表に出ることはなく,かなりの納税者が納得できないままに差押えの通知を受けているのではないかと懸念されるところです。

 なお,国税不服審判所のサイトはこちらです。

平成29年10月〜12月分 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所

 

「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 ほぼ月に1回の割合で連載を続けさせてもらっている「会計不正調査報告書を読む」の連載第73回を寄稿したProfession Journal誌が公開されています。

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 今回は,愛知県下でスーパーマーケットを展開する株式会社ドミーが設置した第三者委員会の調査報告書をとりあげました。本件は,中間報告書が公表されたり,第三者委員会の委員を追加で選任したりと,気になっている事案であったのですが,3か月を超す異例ともいえる長い調査の末,報告書がまとまったようです。

 不採算店舗の減損を回避するための涙ぐましい努力の数々を,数千円単位の利益の付替えまでもを明らかにしている第三者委員会の調査については,「ご苦労さまでした」という外はないのですが,徹底した調査が長期間にわたった結果,ドミー社は四半期報告書が提出できず,上場廃止に追い込まれます。第三者委員会とドミー社経営陣との間でどのようなやりとりが行われたかはわかりませんが,上場廃止という,株主をはじめとするステークホルダーの多くが望んではいなかったはずの結果を回避するために,何か策はなかったのかなというのが感想でした。