「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 不定期で連載させていただいている「会計不正調査報告書を読む【連載第68回】」が本日,Profession Journal誌で公開されました。

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 今回の寄稿は,通常の連載とは趣を少し変え,2017年に設置が公表された上場会社41社における「調査委員会」について,その不祥事の態様や調査員会の構成などに着目して,集計・分析を行いました。

 調査委員会設置を公表した41社の不祥事の中で,いわゆる「会計不正」に該当するものは29社ありました。そのうち,海外子会社を含む子会社による不正は18社と,6割を超える水準になっており,子会社のガバナンスをどうするかが課題になっているものと考えられます。とくに,上場会社が持株会社で,複数の事業会社を傘下に有しているような企業形態をとった場合に,従業員を多く有しているわけではない持株会社による事業会社のガバナンスをどうするのかは,課題と言えそうです。

 

 

「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

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 本日公表されましたProfession Journal誌に,「会計不正調査報告書を読む」連載第67回を寄稿しました。上場持株会社であるOSJBホールディングス株式会社傘下の事業会社で,従業員による不正が発覚したことを受けて設置された社内調査委員会による報告書について検討をしています。

 不正は,協力会社に水増し・架空発注を行ったうえで,キックバックを受領して,交際費や懇親会費に流用していたというもので,とくに複雑な隠蔽工作が行われていたわけでもないらしく,国税局による税務調査で発覚しています。

 いくつか論点がありました。

 OSJBホールディングス株式会社は持株会社といいながら,多くの取締役は事業会社の取締役を兼任しており,実質的に一体となった経営が行われているように思えます。そうした場合における,親会社の子会社の業務執行に関する管理監督はどうあるべきだったのか,というのが1点目。

 不正が発覚した事業会社では,「現場従業員が不正を行う可能性がある」という考えに基づく内部統制が行われていないかったと,報告書で指摘されていることが2点目。

 社内調査委員会の委員の多くは,不正があった事業会社でも取締役または監査役を兼任しており,業務執行にも携わっていましたが,そうした委員による調査に,独立性や中立性が期待できるのか,というのが3点目。

 同業他社の不正事例にもう少し興味を持っていれば,国税局による税務調査を待たずに,不正を発見し,または不正の防止策を策定することができたのではないかと強く感じた不正事件です。

【書籍】沢渡あまね+奥山睦『働き方の問題地図』

 『働き方改革』。

 年初から新聞紙面を飾ることの多い言葉ですが,「さて,どうすればいいのか」とお悩みの経営者,人事部長も数多くいらっしゃるのではないでしょうか。解説本は数多く出ているものの,どれも自社の状況に合うようで会わないし。コンサルタントを雇う余裕もないし,コンサルタントを入れたところで成果が出るのかもわからない。

  そんな『働き方改革』を取り巻く現状に一石を投じる書籍が本書です。

働き方の問題地図 ~「で、どこから変える?」旧態依然の職場の常識

働き方の問題地図 ~「で、どこから変える?」旧態依然の職場の常識

 

  本書は,平易な文章でイラストも多数配されていることから,読みやすいことは間違いありません。何より,お二人の著者のこれまでの実体験に基づいた解説が,非常に分かりやすく書かれています。もちろん,本書で繰り返しメリットが言及されている,テレワーク(在宅での就業)ができない職種もあり(沢渡さんの奥様が保育士をしておられるので,テレワークができるのは沢渡さんだけという記述は印象的でした),必ずしもすべての業種業態に解を与えるものではないのですが,管理部門だけでもテレワークをとりいれてみようとか,営業部門から導入を開始しようといった,「0か1ではない」という提言は,たいへん参考になりました。

 もう一人の著者である奥山さんの体験はもっと壮絶です。2014年5月から1年間の闘病生活を余儀なくされながら,「その時の自分に残されたリソースで最善を尽くす」ことで,奥山さんの経営する会社は,代表者が闘病中でフルタイム働けないにもかかわらず,過去3年間で最も高い売上高を記録したとのことです。

 このままでは「1億総疲弊社会」になってしまうという著者のお二人の主張が現実のものとならないように,できることから始めるしかない。それだけは間違いないようです。

 

【書籍】山口利昭『企業価値を向上させる実効的な内部通報制度』

 同じ公認不正検査士(CFE)資格を有しているということもあって親しくしていただいている,弁護士の山口利昭先生の著書『企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度』を拝読しました。

 同じテーマで書かれた『内部告発・内部通報 その光と影』が刊行されてから6年あまり過ぎ,企業不祥事を見る国民の目も,内部通報制度に対する経営陣や従業員の認識も大きく変わっている中で,民間事業者における内部通報制度の第一人者である山口先生がどのような「解」を導くのか,たいへん楽しみにページを繰りました。 

企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度 (現代産業選書―企業法務シリーズ)

企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度 (現代産業選書―企業法務シリーズ)

 

  小職も「不祥事の再発防止策・早期発見策」などをお話しさせていただく機会がありますと,必ず,内部通報制度について説明をします。まずは通報を集めることが重要である,したって匿名通報も受け付けるべきだ,内部告発をされないためには通報を受けた会社側は真摯に対応しなければならないなど,教科書的な説明をすることが多いのですが,受講されているみなさんにどこまでお届けすることができているのか,甚だ心許なく思うこともあります。

 山口先生は,「走りながら考える内部通報制度」「トライアル&エラー」といった言葉で,まずは導入すること,100点満点を目指す必要はないことを説かれます。なるほど,という感じです。

 また,身近な問題であるがゆえに,比較的軽視しがちな「パワハラ問題」についての,山口先生の警鐘が強く印象に残りました。「パワハラが企業に及ぼすリスクは重大である」と説明されている部分は,きわめて含蓄に富んでいると感じました。このあたりのリスクについては,次に内部通報制度について話す機会があれば,ぜひ,紹介させていただきたいと思った次第です。

Sue Graftonさんの訃報。

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 すっかりご無沙汰している感の強い,キンジー・ミルホーンの生みの親Sue Graftonさんが亡くなったそうです。訃報を読んで初めて知ったのですが,シリーズはまだ続いていたようで,'Y'まで刊行されるとのこと。なぜか日本では,「ロマンスのR」(原題:"R" Is for Ricoche)までしか発刊されておらず,続きが書けなくなっているのかと思っていましたが,早川書房さんが出版してくれない(版権を買っていない)だけだったようです。もしかしたら,あまり売れなくなっていたのかもしれません。

 ご逝去を機に,旧作の復刊や未訳作品の刊行という動きが出てくれれば,ファンの一人としては,いささか複雑な思いを抱きつつも,歓迎したと思っています。

 女性私立探偵小説というジャンルに,私を誘ってくれた作家の一人として,記憶に残る作家でした。合掌。

【書籍】2017年の10冊。

 手許の一覧によれば,2017年には,149冊の書籍を読んでいることがわかりました。月平均12冊ほどですので,サラリーマンを辞めて開業して以来8年,ほぼ同じペースで読んでいることになります。

 ということで,記憶に残った10冊を記録しておきたいと思います(著者名の五十音順)。

東浩紀『ゲンロン0――観光客の哲学』 

ゲンロン0 観光客の哲学

ゲンロン0 観光客の哲学

 

 伊藤恭彦「タックスジャスティス――税の政治哲学」 

タックス・ジャスティス―税の政治哲学 (選書“風のビブリオ”)

タックス・ジャスティス―税の政治哲学 (選書“風のビブリオ”)

 

 井ノ上陽一『ひとり税理士のIT仕事術』 

ひとり税理士のIT仕事術―ITに強くなれば、ひとり税理士の真価を発揮できる!!

ひとり税理士のIT仕事術―ITに強くなれば、ひとり税理士の真価を発揮できる!!

 

 酒見賢一泣き虫弱虫諸葛孔明第伍部』 

泣き虫弱虫諸葛孔明 第伍部

泣き虫弱虫諸葛孔明 第伍部

 

 セキュリティ集団スプラウト『闇(ダーク)ウェブ』

闇ウェブ (文春新書)

闇ウェブ (文春新書)

 

 高桑幸一・加藤裕則編著『監査役の覚悟』

監査役の覚悟

監査役の覚悟

 

 千葉雅也『勉強の哲学――来るべきバカのために』 

勉強の哲学 来たるべきバカのために

勉強の哲学 来たるべきバカのために

 

 細野祐二『粉飾決算vs.会計基準』 

粉飾決算vs会計基準

粉飾決算vs会計基準

 

 Michael Connelly THE DROP 

 W. Bruce Cameron THE MIDNIGHT PLAN OF THE REPOMAN 

真夜中の閃光 (ハヤカワ文庫NV)

真夜中の閃光 (ハヤカワ文庫NV)

 

 

「速報解説・平成30年度税制改正大綱――コネクテッド・インダストリーズ税制の創設」を寄稿しました。

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 先週22日に閣議決定された平成30年税制改正大綱のうちから,情報連携投資等の促進に係る税制,いわゆる「コネクテッド・インダストリーズ税制」について,Profession Journal誌に解説記事を寄稿しました。

 今年の税制改正については抜本的な改正項目が見当たらず,法人税についても手直し的なものと,これまで続けていた「賃金上昇」や「設備投資」の拡充による時限立法的な減税策が目立ちます。今回,解説を依頼された「情報連携投資等促進税制」もそうした流れの一環です。特に注意を喚起したかったのは,ただ,設備を購入すればいいというものではなく,「セキュリティ対策」を義務づけたことではないかと思います。企業を狙った標的型ウィルスの猛威が喧伝される中,生産設備をinternetえ結びつけ,業務の効率化を図ろうとする企業に対して,それなりのセキュリティ対策を求めるのは当然だと思います。

 なお,Profession Jounal誌では,税制改正情報のまとめサイト(資料リンク集)を作っており,こちらも参考になります。

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