「会計不正調査布告所を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載させていただいているProfession Journal誌の最新号が公開されました。今月とりあげた調査報告書は,ジャスダック上場の室内装飾品の製造販売会社五洋インテックス株式会社の第三者委員会調査報告書です。

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 もともとは,カーテンを主力商品とする五洋インテックス社が,それ以外の分野へと事業を多角化するにあたって,手っ取り早く,「既存の商流の中に入る」という手法を選択したことが問題だったわけですが,その結果,過年度の有価証券報告書の訂正とそれに伴う,証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告,東京証券取引所による公表措置及び改善報告書の徴求など,実に厳しい処分を受けることとなってしまいました。そのうえ,新規ビジネスの責任者でもあった取締役まで辞任することとなりました。何が,悪かったのでしょうか。

 第三者委員会は,(1) 企業風土,(2) 権限分離体制,(3) 人員不足,(4) 不十分な業務処理体制といった問題点を指摘して,再発防止策を提言していますが,そもそも,新規事業分野へ進出を決めたことや,そのために取締役を社外から招聘したことについては,とくにコメントはありません。カーテンの製造販売という本業部門の業績が伸び悩む中,事業の多角化を図るという経営陣の判断に瑕疵があったと断定するのは難しいかと思いますが,本業とのシナジー効果が見込まれる分野であるとか,本業での経験や人脈が生きるような分野の進出ではなく,太陽光パネルの販売や,結果的には詐欺被害に遭ってしまったタブレット端末の販売など,まったく経験も知識もない異業種への参入を,どのような意思決定過程によって決めたのか,監査役会は,そうした意思決定れに異論を唱えなかったのか,もう少し突っ込んだ分析があればと感じました。