「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載させていただいている「会計不正調査報告書を読む」が,Prrofession Journal誌の最新号に掲載されました。今回とりあげさせていただいた報告書は,ハイアス・アンド・カンパニー社のものです。第三者委員会のメンバーが豪華で,不正調査の分野でご高名の先生方ばかりですので,公開される前から,「今後の調査報告書のお手本になるのではないか」と期待していました。

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 事例そのものは,会社全体が株式の上場に向けて頑張っている中で,本来であれば,ブレーキ役が期待されているはずの財務経理部門や監査役まで,「上場」が目的になってしまった結果,上場のために粉飾を容認してしまったという。言ってみればよくある事例かもしれません。ハイアス社が上場に向けて邁進していた時期,ハイアス社の経営陣の多くがかつて在籍していた株式会社エル・シー・ホールディングスは,有価証券報告書の訂正命令をきっかけに,上場廃止への道をたどっている最中だったのですが,ハイアス社の経営陣の中に,袂を分かった出身母体に対する意地のようなものもあったのかもしれません(報告書では触れられていませんでしたが】。

 報告書の中で,最も読みごたえのあったところは,「発生原因の分析」でした。17ページに及ぶもので,「業務執行レベル」「組織のガバナンス」「組織風土・組織運営」という三つの切り口から,問題を分析しており,この部分を読んで,「自分の属している組織は大丈夫だろうか」と自問するだけで,会計不正の抑止を考えることにになるのではないかと思います。

 かなり長い報告書ですが,管理部門,監査部門に属されているみなさんには必読の内容となっていると思料します。