「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

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 第57回目となる今回,とりあげさせていただいた事例は,1月31日に公表された株式会社ブロードリーフの調査委員会最終報告書です。従業員による不正送金事件が,どうして長期間にわたって発覚しなかったのか。常勤監査役を調査委員長に据えた調査委員会の報告書を検証しました。

 主犯である元従業員は,業務部に課長として配属されていた時代,内部管理体制が脆弱であることを利用して,複数の預金口座に不正な送金を繰り返していました。その後,2013年4月に,元従業員は内部監査部門に異動となりますが,2006年度から配転になるまでの間に行われた不正は,2015年に業務フローの見直しが行われるまで,発見されることはありませんでした。

 元従業員が内部監査部門に異動になった時期は,ちょうどブロードリーフ社が東京証券取引所第1部に上場を果たした時期と重なっています。上場に際して内部管理体制を強化するための配転であったことは,報告書には触れられていませんでしたが,想像できるところですし,同時に,元従業員が経営陣からそれなりの信頼を得ていたか,少なくとも,不正の疑いはまったく持たれていなかったのではないかと思います。

 元従業員は,社内調査の過程で所在不明になり,懲戒解雇処分を受けていますが,ブロードリーフ社は,再発防止策の一環として,元従業員に民事上の損害賠償請求訴訟だけでなく,刑事告訴を検討中とのことです。脆弱な内部管理体制を放置した結果,従業員を犯罪者にしてしまうこととなった責任は,誰が負うべきなのでしょうか。