「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載をさせていただいておりますProfession Journal誌の「会計不正調査報告書を読む」第114回が,本日,公開されました。毎年60社ほどの上場会社が調査委員会を設置しており,本連載でも,どの報告書とりあげるかに悩むことが多いのですが,優先して選択している基準のひとつに「2度目(もちろん3度目以降も含む)の外部委員会設置」というものがあります。今回は,2017年12月以来2度目の調査委員会設置となった大豊建設株式会社の外部調査委員会調査報告書をとりあげました。

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 最も注目していたのが,「前回の調査の際に提言された再発防止策はどうして機能しなかったのか」について,今回の調査委員会がどこまで踏み込んで言及をしているかという点でした。外部調査委員会は,報告書31ページから1ページと少しにわたって分析しています。調査を依頼した会社にとっては自らの失策を原因分析されるわけですから,あまり聞かれたくない事項だとは思うのですが,分析結果を読む限り,会社側は,調査員会のインタビューにきちんと答えているようです。

 ただ,今回の調査委員会のみなさんが,前回の調査委員からインタビューをできたのかどうかは明記されていません。調査委員会の再発防止策に託した思いと,提言を受けた会社の認識にどのような違いがあったのか。その結果として,再発防止策はどのように社員に受け止められたのか。そうした分析が書かれていれば,本報告書は,不正調査に従事する人たちにとってさらに有意義な内容になっていたのではないかと思いました。