「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載中の「会計不正調査報告書を読む」第125回が,昨日,Profession Journal誌上で公開されました。今回は,2度目の調査委員会設置となる株式会社ジー・スリーホールディングスの特別調査委員会調査報告書をとりあげました。

 調査委員会の特徴としては,

1.前回2015年の第三者委員会の委員長が,今回も委員長に就任していること

2.調査期間が長い(約2か月半)

といった点が挙げられるかと思います。

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 調査委員会委員長にとって最もショックだったのは,前回調査時にまとめた「経営改善に向けた提言」がいつの間にか骨抜きにされ,ないし崩し的に元の経営体制に戻ってしまい,前回と同じ不正を,さらに巧妙に繰り返していたという点でしょうか。

 また,同社の有価証券報告書を確認していて気づいたのですが,ジー・スリーホールディングスでは,2年ごとに監査法人が異動になっており,おそらくは前任の監査法人からの引継ぎにも問題があったのではないかという点です。報告書の中では,不正な売上計上を行ったときに,ジー・スリーホールディングス関係者から監査法人に対して虚偽の説明があったことも指摘されていますが,「2年」という非常に短い期間では,説明内容を不審に思ったとしても,さらに調査を行うといったところまでは手が回らなかった可能性もあります。

 さらに,第三者委員会らの提言を受けて,自社で定めた再発防止策の履行について,監査法人がどれほど興味を持って,履行状況の確認を行っていたのかという問題もあります。

 いずれにしましても,経営陣が刷新されて,旧経営陣のによる会計不正が問題視され,調査委員会による調査を経て,もう一度経営改善への提言を受けた同社が,どのように再発防止策を履行するかについては,今後も注視したいと思います。