「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 web情報誌Profession Journal誌に毎月連載している「会計不正調査報告書を読む」連載第142回が,去る15日に公開されました。今回とりあげた報告書は,株式会社パスコが設置した特別調査委員会によるものです。

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 調査委員会設置のきっかけは,従業員からの内部通報だったということですが,もともとの通報内容は「長時間労働」や「残業」に関するものであったため,人事部門がヒアリングをしたところ,売上計上を先延ばしして利益を翌期に繰り越しているという証言が得られ,「粉飾決算」と記したエクセルシートのメモを作成して,人事担当の執行役員と当時の業務監査部長とで情報を共有し,人事担当執行役員は,業務監査部長に調査を指示していたものの,この証言は9か月以上も放置されることとなりました。調査委員会に対して当時の業務監査部長は証言を拒否したため,放置された原因は判明していません。

 また,パスコ社は,東京国税局による税務調査において,2020年3月末を契約納期限とする商談のうち,1,173件について,進捗状況が100%になっていないことについて,調査を命じられており,本来であれば,税務調査があった2020年11月の段階で,十分な社内調査を行い,利益の先送りを究明すべきであったと思われるのだが,パスコ経理部門は,現場から上がってきた虚偽の回答をそのまま東京国税局に伝えていました。問題は,東京国税局も,その回答を受け容れて,売上計上漏れとして否認するのではなく,指摘に止めたということかもしれません。

 特別調査委員会も何度も指摘していますが,パスコ社では,過去も不適切な経理処理が何度か発覚しており,そのたびに,再発防止策を策定し,実行してきました。ところが,今回の不適切な利益の先送りを防止することはできませんでした。その原因について,調査委員会は「本件の真因」として踏み込んだ分析をしています。

 ぜひ,ご一読ください。