「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

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 今月とりあげた調査報告書は,JASDAQ上場のGMOアドパートナーズ社の連結子会社で発覚した架空売上計上事件です。本事例の特徴は,第三者委員会による報告書の公開方法にあります。第三者委員会は,事実関係と原因分析中心の「中間報告書」を先に会社側に提出したうえで,あらためて経営陣を中心にヒアリングなどの追加調査を行い,責任の所在と再発防止策をまとめた「追加調査報告書」を提出するという手法をとりました。こうした手法は,「調査報告書の事前非開示」を指針とする日弁連の「第三者委員会ガイドライン」とは一線を画すものではありますが,第三者委員会調査による事実誤認を防止するとともに,経営陣に意見表明の機会を与えるという手続保障の面から見ても,なかなか良く考えられたものであると感じました。

 実際の会計不正の手口は稚拙なものであり,不正に計上した売上高も2億円あまりと,300億円を超える売上高を計上しているGMOアドパートナーズ社から見れば,大きな金額ではないのですが,本件もまた,子会社管理の難しさを実感させられた事例でした。

 なお,GMOアドパートナーズ社の以下のリリースでは,第三者委員会に支払った調査費用と監査法人に支払った追加監査費用額が,合計で133百万円であることが公表されています。あまりこうした費用が公表されることもないので,ご参考までにリンクを貼らせていただきます。

https://www.gmo-ap.jp/uploads/2017/05/release_20170529.pdf