「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 月に一度,連載をさせていただいておりますProfession Journal氏の「会計不正調査報告書を読む」連載第96回が公表されました。今回とりあげた調査報告書は,東洋インキSCホールディングスが設置した特別調査委員会によるものです。

profession-net.com

https://profession-net.com/professionjournal/financial-statements-article-117/

 フィリピン子会社で長く財務・経理部門の責任者を務めてきた現地採用の社員が関与した,簿外の借入金や買掛金,過大計上された棚卸資産といった会計不正事件。その解明のために派遣されたフィリピン調査チームと弁護士とともに会談に臨んだ当該社員とのかけひきは,なかなか興味深いものでした。

 現地採用社員を20年もの長きにわたって経理部門の責任者としていたことを誰も問題視することなく,また,海外子会社の社長に経理的な知見がない者を派遣し続けたことなど,不正は起こるべくして起こったという感を抱きました。報告書では,親会社の経理部門がどの程度まで海外子会社決算に関与していたのかは判然としませんが,連結パッケージに入力されたデータに何ら疑念を持たずに,連結決算を行っていたのであれば,いくら内部統制における重要性が低い海外子会社とはいえ,放置が過ぎたのではないかと思います。

 次回の連載は,年明け,にわかに騒がしくなったIT業界を巻き込んだ架空循環取引事件をテーマにする予定です。原稿をまとめるまでに,どの程度事件の内容が判明しているのかは,まだわかりませんが。