「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 1月以来,IT業界を騒がせている架空循環取引事件。その首謀者と目されていた人物がネットワンシステムズ株式会社のシニアマネージャーです。先月13日付で,同社が公表した特別調査委員会中間報告書について,Profession Journal氏の連載記事「会計不正調査報告書を読む」連載第97回として寄稿しました。

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「中間報告書」と題されていることからもわかるとおり,特別調査委員会による調査は現在も継続中であり,会社側の発表では,3月13日(金)を目途に最終報告書が公表される予定だということです。

 中間報告書で新たに判明した事実としては,単なる架空循環取引だけではなく,取引を偽装して外部に資金が流出していることが挙げられます。もちろん,これが,調査を継続する一番の理由になったのであろうことは想像に難くありませんが,筆者がそれ以上に気になっているのが,本件架空循環取引が破綻した結果,損失を被ったのはどこの会社かという事実でした。

 ネットワンシステムズのシニアマネージャーが主導してきた架空循環取引は,昨年11月,ネットワンシステムズ,日鉄ソリューションズに対する国税局の税務調査により発覚し,取引=資金の流れがストップしているはずです。その時点で,仕入代金の支払いを先行している会社は,売上が計上できない状態のまま,「仕掛品」または「前渡金」といった資産を有しており,これが実体のない債権(回収不能債権)となって貸借対照表上に残っているはずです。もちろん,過年度の取引については,各社とも資金決済を終わっているので,架空の売上高・利益が計上されているのは当然です。問題は,進行期である2020年3月期決算に与える影響のはずです。

 ところが,こうした損失に言及しているのはネットワンシステムズだけであり,他の循環取引参加社は,損失の発生を明言していません。

 さて,こうした疑問点について,本日公表が予定されているネットワンシステムズの最終報告書で,解決するのかどうか,大いに気になるところです。

 なお,最終報告書についても,Profession Journal誌に寄稿させていただく予定です。