「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 先週は,いろいろと所用に追われてしまい,Profession Journal誌で連載中の「会計不正調査報告書を読む」の新しい記事が公開されていることを告知するのが遅くなってしましました。今回は,SBIソーシャルレンディング社の第三者委員会調査報告書をとりあげています。

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 一般投資家から集めた資金でファンドを組成,有望な投資先に資金を貸し付けて,投資家には事業収益から分配するという,ソーシャルレンディングというビジネスモデルで業績を伸ばし,近い将来の上場も視野に入れていたSBIソーシャルレンディング社。しかし,その融資は「A社」に極端に偏重したものとなっており,「A社」は過去の借入金返済や利息支払いのために,次々と新規融資を引き出していました。

 第三者委員会の設置が公表された後,こうした融資のからくりを暴いたのは週刊新潮2021年2月25日号です。この記事は,現在でも,デイリー新潮のサイトで読むことができます。

www.dailyshincho.jp

 SBIソーシャルレンディング社第三者委員会は,融資を受けたA社が行うこととなっていたプロジェクトに進捗状況を精査して,ほとんどのプロジェクトについて工事や設備の導入が止まっており,融資によって得た資金型のファンドへの利払いや償還金に充当されている実態を把握します。ただ,週刊誌長の記事を超えるような新しい事実の発見はなかったようです。

 第三者委員会による調査の渦中,SBIソーシャルレンディング社は,「未償還元本相当額の償還に向けた取り組みに関するお知らせ」を公表して,投資家保護を打ち出します。投資家への勧誘にあたって金融商品取引法違反に該当する行為があった可能性があるという調査結果からすれば当然の行為だと言えそうです。

www.sbi-sociallending.jp

 さらに昨日には,SBIグループのソーシャルレンディング事業からの撤退も報道されました。上場に向けた無理な事業拡大目標を掲げた経営トップと,安易な融資拡大先として「A社」に依存する担当者――第三者委員会は,そんな構図を描き出しましたが,残念ながら,「A社」が融資によって獲得した資金の使途については,全容解明にはほど遠い内容でした。東京地検特捜部が捜査をしている刑事事件となっていることから,公表できなかった事実も多くあったのではないかと想像はできますが,少し物足りない内容であったと評価します。

mainichi.jp