「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載中のweb情報誌Profession Journal「会計不正調査報告書を読む」連載第147回が,昨日,公開されました。前回に引き続き,株式会社ビジョナリーホールディングスの元社長以下,元取締役,元執行役員らによる不正に関する責任調査委員会の報告書をとりあげました。

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 こうした責任調査委員会が設置されることはあまり多くないのですが,たまに報告書に接すると,責任判定の難しさに,調査委員会が苦慮している感じが文章から伝わってきます。いくつもの前提条件を置き,「仮に――だとすれば,法律違反に問われる可能性がある」という形で,一見,責任があるのかどうかわからないような表現で文末を終えることが多いかと思います。ビジョナリーHD責任調査委員会も同様の苦労の後を見せていますが,それでも,元社長の行為を中心に,何らかの「法律違反が成立すると考えられる」という判断をきちんと示している点,評価できるのでhないかと思います。

 もっとも,前回の連載で概説した第三者委員会による調査は,調査対象者の非協力や虚偽の発言もあって,必ずしも従前の調査ができたわけではなく,その調査結果を前提に,取締役,執行役員または従業員としての法的責任を判定しなけらばならいというのは,なかなか困難な作業であったことと思料します。

 記事の後半は,責任調査委員会の調査報告書受領後の,ビジョナリーHDをめぐる動きを時系列でまとめています。調査が終わったからこれで一件落着ではなく,これから,元社長らの責任を追及する損害賠償請求訴訟に臨みながら,東京証券取引所による「特設注意銘柄指定」の解除に向けて社内体制を立て直しつつ,風評被害を晴らしながら,業績を維持または拡大していくというのは,並大抵のことではないと考えます。とくに,元社長らとの間の訴訟に関しては,判決までには相当の年月がかかることが予想されるとともに,元社長らがどのような反論をしてくるのかわからないこともあって,先行きが見えないところです。

 引き続き,今後の動きを注視していきたいと考えています。