「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載を続けさせてもらっておりますProfession Journal誌「会計不正調査報告書を読む」連載第112回が公開されました。今回は(も?),ネットワンシステムズ社の調査報告書です。昨年12月に公開された外部調査委員会報告書の続編というか,完結編に位置づけられそうな,3月18日に公開された「外部調査委員会調査報告書~ガバナンス・企業文化の観点から~(開示版)」が。テーマです。

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 2019年11月,東京国税局の税務調査委端を発した今回の一連の調査は,どうやらこれで,終わりになりそうですが,この1年半ほどの間,ネットワンシステムズ社は,会計不正事件の後始末に追われました。

循環取引の端緒発覚から本調査報告書公表に至る経緯

2019年11月14日
東京国税局による税務調査の過程で、納品の事実が確認できない疑義があるとの指摘を受ける。
同年12月13日
特別調査委員会による調査開始。
2020年2月13日
特別調査委員会の中間報告書の受領/公表。
同年3月12日
特別調査委員会による調査結果と今後の対応を公表。
同年5月8日
東京証券取引所による「改善報告書」の提出請求及び「公表措置」の実施。
同年6月5日
東京証券取引所への「改善報告書」の提出。
同年7月13日
財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ。
同年10月26日
外部機関からの指摘により、従業員による資金流用の疑義を認識。
同年12月14日
外部調査委員会調査報告書受領(公表は16日付)。
同年12月16日
「ガバナンス・企業文化改革委員会」の設置、東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出、監査報告書及び四半期レビュー報告書における限定付適正意見の受領。
2021年3月10日
警視庁捜査2課が、元社員の牟田友英容疑者(42)を詐欺容疑で逮捕したことを発表、「当社元従業員の逮捕について」をリリース。
同年3月18日
「外部調査委員会調査報告書~ガバナンス・企業文化の観点から~(開示版)」の公表。
同年3月19日
再発防止策及び今後の対応について公表。

 最後は,代表取締役を含む3名の取締役と常勤監査役が辞任して,経営体制の刷新を図ることとなったわけですが,本報告書が公表される少し前,3月10日には,「ネットワン社元社員を逮捕 PC代1,500万円詐取容疑」というニュースが報じられました。逮捕容疑としては,2011~14年にパソコン計約2,000台を勝手に購入して転売し、約2億円を得たとみて調べているということで,一連の循環取引の首謀者であった牟田容疑者は,調査対象となった事案以外にも,不正を働いていたようです。

 Professionn Journal誌にも書きましたが,私は,逮捕された牟田容疑者の年齢が42歳であったことに大いに驚くとともに,PC代金の詐取という事案は、これまで開示されたどの報告書にも言及がなかったことに疑問をもち,さらに,2008年に中途入社した牟田容疑者は,その3年後,マネージャーに昇格する前に,こうした不正を実行できる立場になっていたということにも驚かされました。

 今後は刑事事件として,まだ疑問点として残っていることが解明されるのかどうか,気になるところですが,一方,ネットワンシステムズ社が仕組んだ架空循環取引に関わったみずほ東芝リース社と日鉄ソリューションズ社の民事粗相の行方も気になります。訴訟の提起以来1年が過ぎましたが,まだ続報はないようです。