「税務弘報」2019年10月号に寄稿しました(発売中です)。

 今回,編集部からいただいたお題は「減価償却」。措置法上の特別償却はともかく,通常の減価償却が課税上の問題になることは少ない――そんな思い込みを払拭させた事件の一つが,大手カレーチェーンCOCO壱番屋のの創業者が経営する会社が巨額の追徴を受けることとなった事件でした。無償で貸与していたバイオリンの名器「ストラディバリウス」は,減価償却可能かどうか。楽器の耐用年数は「5年」ですから,減価償却が認められれば,「事業の用に供している限り」は,億単位の減価償却費が計上できることになります。 

 ということで,「減価償却の再チェックポイント」と題した論考をまとめました。

税務弘報 2019年 10 月号 [雑誌]

税務弘報 2019年 10 月号 [雑誌]

 

  上述の「ストラディバリウス」は,使用や時の経過に伴い価値が減少するというものではありませんから,当然,減価償却は認められなません(むしろ希少性が増してオークションなどでは値上がりする場合も考えられます)。

 原稿の中で他にとりあげたのが「耐用年数」,とくに,賃借している事務所の内装工事について,どのように考えればいいかという点です。たとえば,賃貸借契約期間が2年の事務所に間仕切り工事をした場合,耐用年数通達の「15年」を適用すると,契約期間満了後に事務所を移転するときに,多額の除却損を計上することになります。それよりは,契約期間を耐用年数として,減価償却費を計上すべきではないのか。そういった論点について,耐用年数通達を参照しながら,まとめました。

 ともすれば「節税策」として論じられることの多い減価償却ですが,その本来の目的である「適正な期間損益計算」や「費用収益対応」といった視点から,毎期継続して規則的な償却を行うことが求められていることを,改めて確認しておきたいと考えます。