「租税争訟レポート」をProfession Journal誌に寄稿しました。

 少し遅くなってしまいましたが,先週12月1日公開のProfession Journal誌に,「租税争訟レポート」連載第64回を寄稿しました。今回,とりあげた判決は,「派遣社員による横領と仮装隠蔽行為の認定」が争点となったものです。

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 第1審である大阪地裁,控訴審である大阪高裁ともに,関係会社から派遣された経理担当者による架空仕入の計上や売上の過少計上,架空の工具器具備品の計上とそれに伴う架空減価償却費の計上を,納税者本人たる原告の行為と同視することができると認定して,原処分庁による重加算税の賦課決定処分を適法であると判断して,原告(控訴人)の主張を棄却しました。

 筆者は,今年お亡くなりになった金子宏先生の著書「租税法」の記述を一部引用しながら,

本件判決は、乙(横領事件の首謀者)による領得があったにもかかわらず、原告代表者である甲が、従業員の管理監督を怠っていたために、隠蔽・仮装行為に気づくことができなかったことに着目して、従業員の行為を納税者である法人の行為と同視することができることから、重加算税の賦課決定処分は適法であるという判断を示したものであり、とくに控訴審判決は、「乙が隠蔽仮装行為を行ったのが、自己の利益を図るためであった」としても、納税者の行為と同視し得るという判断を示しており、金子名誉教授の見解とは立場を異にしているように思料する。

と原稿を締め括りました。

 個人的には,従業員をはじめ,本件のような派遣社員,税理士事務所の職員など,経営者ではない第三者による仮装隠蔽行為が,納税者である法人の行為を同視することができるとする判決や裁決が散見されるように思われ,懸念しているところです。